◆仕事・恋・人間関係、しがらみを感じながらも何とか折り合いをつけているヒロインは、現状を否定しているわけではないが、「これは本当の自分ではない」と違和感を覚え、満ち足りているはずなのに居心地の悪さを感じている。(50点)
「“愛”は本を売るために作家が考えた言葉」、ヒロインが言うように、恋愛小説に描かれた物語のごとき劇的な出来事などわずかで、ほとんどの人は退屈な毎日を繰り返しながら歳老いていく。そんな、仕事・恋・人間関係、それらにしがらみを感じながらも何とかうまく折り合いをつけている彼女の平凡な日常がリアルだ。現状を否定しているわけではないが、どこか「これは本当の自分ではない」と心の隅で違和感を覚え、満ち足りているはずなのに居心地の悪さを感じる現代女性の繊細な心理を佐藤江梨子が好演。不幸な環境の少年を救うことで己を変えるきっかけを探そうとする姿は、真正面から他人と向き合うのが生きることの第一歩であると語っている。
(福本次郎)