◆あらゆる事象には理由があり、誰かが原因となる出来事の引き金を引く。「自分が選ばれた」という、偶然のひらめきを啓示と理屈付け、自らを神格化していく過程で、怪しげな宗教家の説く終末論の胡散臭さをシンプルに視覚化する。(60点)
あらゆる事象には理由があり、誰かが原因となる出来事の引き金を引く。原因と結果、出口のない部屋に閉じ込められてその関連を学んだ男は、世の中に影響を与える力を手に入れたことを知る。ところが、世界を操ることができても、そこに本人がいないという矛盾。映画は意思に反して他人の運命を握ることになった主人公がたどる迷宮を通じ、怪しげな「宗教家」が説く精神世界を描く。「自分が選ばれた」という、偶然のひらめきを啓示と理屈付け、自らを神格化していく過程で、彼らの説く終末論の胡散臭さをシンプルに視覚化する。
メキシコの覆面レスラー・エスカルゴマンは愛する家族のために今日もリングに上がる。一方、真っ白な部屋で目覚めたパジャマの男は、壁に突き出た天使のちんこを押すと様々なものが飛び出し、その一つが出口に通じていることを発見する。
どのちんこを押せば何が得られるかという法則性に気付いた男は、試行錯誤を重ねた上についに出口に到達する。しかしそこは新たなステージへの入り口に過ぎず、今度はより大きく暗い部屋に導かれる。部屋の壁からは大人の天使のちんこが突き出ていて、それに触れるとエスカルゴマンが見事な勝利を収める。男は天使の部屋から現実への架け橋を見つけたわけだが、それはリモコン操作のように遠いところから人やモノにきっかけを与えているだけ。だがそこで男はなすべきことを見出していく。
やがて男は自分が世界を動かしていること知ると、彼の姿はいつしか長髪ヒゲもじゃの麻原彰晃のように変貌し、神のごとき全能感に酔っている。それは彼の脳内のバーチャルようでもあり客観的なリアルようでもある。いずれにせよ彼の中にあるのはその力をどのように使ってよいのか分からない戸惑い。最後に男は巨大なちんこに触れようとするが、それは世界の崩壊を示唆するのか、悪夢からの覚醒を意味するのか。麻原という具体的な「悪のシンボル」を使用している以上、男の未来に待ち受けているのは「死」以外にはありえないはずだ。
(福本次郎)