さらば、ベルリン - 福本次郎

◆モノクロームのシャープな陰影と戦争の影をひきずる男と女。過去の名作からスタイルを盗むが、物語がきちんと整理されておらず、結果として主人公は謎と秘密と嘘という闇の彼方にある真実に近づいたつもりで遠ざかってしまう。(30点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 モノクロームの映像が醸し出すシャープな陰影と、戦争の影から逃れられない男と女。過去の名作からそのスタイルを盗むことには成功しているが、そこに描かれる物語はプロットがきちんと整理されておらず、まるでこの映画の舞台となった終戦直後のベルリンのような混沌。結果として、謎と秘密と嘘という闇の彼方にある真実に近づいたつもりで遠ざかっている主人公以上に混乱してしまう。結局彼が愛した女は何者だったのか、命がけで救う価値があったのか、何より主人公との愛は本当だったのか。あまりにも複雑な迷宮のように、明確な答えを得られないまま映画はフェイドアウトする。

 ’45年7月、ポツダム会談取材のためにベルリン来た記者のジェイクはかつて恋人だったレニーと再会する。しかしレニーは今ではジェイクの運転手・タリーの情婦に身を落とし、世を忍ぶように生きている。そんな時、タリーが殺され、レニーの夫・エミールを米軍が追っていることをジェイクは知る。

 映画の前半、タリーが自分のカネまみれな生き方について独白するシーンがある。ここでタリーが語り部となり事の真相を明かすのかと錯覚させるのは脚本の失態だ。あくまでも語り部はジェイクで、ジェイクがタリーの死の背景を探るうちに思いがけないレニーの正体を知ることになり、彼女を生かすべきか殺すべきかぎりぎりの選択を迫られたり、レニー自身が裏切りと欺瞞に満ちた自分の人生に対して決着をつけるという構成にすべきだろう。

 ユダヤ人でありながらSS将校の妻となり同胞のユダヤ人を密酷した女。しかも夫・エミールはユダヤ人を計画的に殺すための計算をする任務を負っていたという戦犯。さらにタリー殺しの犯人。そんなレニーの生き残ったことへの申し訳なさや、彼女を愛したジェイクの苦悩も描かれることなく、レニーはベルリンを脱出する。ロケット科学者をめぐる米ソの駆け引きも消化不良で、カタルシスを感じることはなかった。

福本次郎

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