この愛のために撃て - 福本次郎

人間の二面性を見事に描き切っていた。(点数 60点)


(C)2010 LGM FILMS – GAUMONT – TF1 FILMS PRODUCTION – K.R. PRODUCTIONS

逃げる男と追う刑事、肺がきしみ心臓が悲鳴を上げ足がもつれてもな
お走り続けるダイナミックな追跡劇を、カメラはリアリティたっぷり
に再現する。誰が味方で誰が敵なのか、殺し屋と看護師が、様々な偽
装と欺瞞に行く手を阻まれながら真相に近づく中、意思と肉体的なタ
フネスを見せていく。そんな、映画全編を貫く疾走感と予断を許さな
い意外な展開の連続は、ラストまで衰えず感覚を刺激し続ける。

【ネタバレ注意】

妊娠中の妻・ナディアを誘拐された看護師のサミュエルは、入院中の
指名手配犯・ユゴーを連れ出せと命令される。しかし、身柄交換時に
邪魔が入り、サミュエルとユゴーは組織に命を狙われる羽目になる。

サミュエルは担当の女刑事がいきなり射殺され、ユゴーも相棒を失う。
本来ユゴーを憎むべき立場のサミュエルはユゴーしか頼れる者がいな
い。ユゴーもまたサミュエルの決意と行動力を“使える”と判断した
のか、見捨てるどころかむしろ友情のような感情を抱きはじめる。共
通の敵と戦い、生き残りにはお互いの協力が必要という状態に追い込
まれた2人がいつしか信頼関係を築いていく、その変化が“骨太な男の
ドラマ”の印象を強くしている。

平凡な人生を送ってきたサミュエルがナディアのために暴力に目覚め、
血なまぐさい世界を住み処にしてきたユゴーが義理を果たそうとする。
彼ら2人が思いもよらぬ素顔・眠っていた本性を露わにする過程は、人
間の二面性を見事に描き切っていた。

福本次郎

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