ここに幸あり - 福本次郎

◆説明的なセリフやシーン、そして感情を強調する音楽もない。映画は環境が激変した男の体験をスクリーンに投げ出すだけだ。その語り口に戸惑うが、やがて柔らかいベッドに横になっているような心地よい陶酔に昇華されていく。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 説明的なセリフやシーン、そして感情を強調する音楽もない。映画は環境が180度変わった男が体験するエピソードをスクリーンにただ投げ出すだけだ。登場人物の背景や彼を取り巻くシチュエーションはその映像から推測するしかない。しかし、ゆったりと流れていく時間の中で主人公の友人の多さが彼の人柄を物語っていく。そしてなぜこれほどまでの多くの知己を得たかを想像することで、彼の人生が浮き彫りになる。その語り口に前半は戸惑うが、やがて柔らかいベッドに横になっているような心地よい陶酔に昇華されていく。

 大臣のヴァンサンは多忙な日々を送っていたが突然失脚、オフィスも公邸も追い出される。生まれ育った下町にある母親が持つアパートに戻るが、そこもアフリカ人に不法占拠されていた。仕方なく隠し部屋で暮らし始める。

 一国の大臣にまでなるくらいだから、ヴァンサンは若いころからかなりのエリートだったはず。それでも古い友人たちがすぐに受け入れてくれるのは、やはりヴァンサンがその能力を鼻にかけずにいたからだ。また、さまざまな年代の女性からも敬遠されることなく交流するが、映画は彼の人間的な魅力を強調するようなことはしない。ただ、ヴァンサンが困ったときに誰かが救いの手を差し伸べ、時間が空いているときは一緒に食べ・飲み・歌う。そういった描写だけで十分に彼が義理人情に篤く友情を大切にする男であることが伝わってくる。

 大臣を辞任した後、その地位や権力に一切の未練を残さないところがいい。決してクールを気取っているわけではなく、ただ流れに身を任せているだけ。カネにも執着せず、有り金は飲み代に使ってしまう。さらにラストシーンではヴァンサンを慕って何人もの女性がランチパーティに集う。衣食住だけでなく友人や女性関係にも恵まれている。これで気に入った棺桶が手に入れば言うことなし。現実はこれほど甘くはないが、こんな老後を送りたいという幸せな夢を見せてくれる。

福本次郎

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