◆単純な泣き映画としてみればなかなか(65点)
オスカー俳優デンゼル・ワシントンが初めてメガホンを取った感動ドラマ。
脚本のアントワン・フィッシャーの実話が元になっているが、この映画は、裏話が結構面白い。
たとえば、脚本のフィッシャーは、もともとソニーピクチャーズの警備員をしていたが、偶然彼の身の上話を知ったプロデューサーが、脚本の書き方も知らない彼に、映画の脚本を依頼したという逸話がある。
彼は、わざわざ脚本のスクールに通ってからこの映画の脚本を仕上げ、しかもそれには、デンゼルワシントンの初監督作というすごいおまけがついた。まさにアメリカンドリームである。
また、主演のデレク・ルークの話もいいのだ。彼は、やっぱりソニーピクチャーズの売店の店員をしていたが、そこにデンゼルがふらりと現れて、彼を主演として採用する事を直接話したのだという。
私もソニーピクチャーズの売店に勤めようかしらと思ってしまうようなエピソードだが、こうしてこの映画は、制作秘話にも感動的なエピソードを抱えたまま、完成したというわけだ。
デンゼルは、下手な小細工をせず、ストレートに人物を描写し、最後のお涙頂戴まで一気に見せる演出方法をとった。まあ、最初にしてはまあまあなのではないだろうか。
デレク・ルークやその恋人役、もちろんデンゼル本人の演技力が見事で、物語に没頭でき、最後にはちゃんと泣ける仕掛けになっている。
あまり奥行きの深い話ではないが、泣ける映画ではあるので、単純な泣き映画として認識し、劇場に向かうといい。そうすれば、そこそこ楽しめるはずだ。
(前田有一)