きな子 ~見習い警察犬の物語~ - 福本次郎

◆落ちこぼれ犬飼育係のヒロインが、犬に育てるには、犬の気持ちを理解してやる気を引き出さなければならないことを学んでいく。愛情を注ぎ、犬の技量の向上とともに訓練士も成長していく過程がほのぼのとしたタッチで描かれる。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 物覚えが悪く、運動能力も劣り、食も細い。警察犬としてはおよそ素質のない犬を自分で育てようとするヒロイン。「手のかかる子ほどかわいい」といわれるが、落ちこぼれ犬の面倒を見ているうちに彼女もまた、犬に接するには、犬の考えを理解してやる気を引き出さなければならないことを学んでいく。犬の信頼を得るために仕事として世話する以上の愛情を注ぎ、犬の技量の向上とともに訓練士も成長していく過程がほのぼのとしたタッチで描かれる。

 警察犬訓練施設に入所した杏子は、弱っているラブラドール・レトリバーの子犬を飼育担当すると宣言、きな子と名付ける。だが、出場したコンクールでいきなり大失敗、その場面がTV中継されてきな子は一躍有名になる。

 通常早朝5時に始まる犬舎の掃除・エサやりでは間に合わないために、杏子は3時に起きてきな子との時間を設ける。必死に調教するが、きな子は集中力散漫で嗅覚もいまいち。きな子への杏子のいらだちは、きな子のストレスとなってきな子の健康を蝕み、コンクールの嗅覚試験終了後にきな子は倒れる。きな子は杏子の顔色を常にうかがい、杏子の期待にこたえられないのを真剣に気に病んでいたという主従関係。そこで初めてきな子に命令するのではなく、心を通わせるパートナーとして扱えばいうことを聞いてくれると杏子は知り、彼女はわが身の至らなさに自信をなくして家に帰ってしまう。

 その後、地元の人気者となったきな子はイベントに引っ張りだこになるが、活き活きとした表情はなくどこか寂しそう。そんなきな子の活躍をTVで見る杏子はもっとつらそうだ。きな子が倒れた時杏子は「こんなバカ犬」と思い、きな子は「ひどい訓練士」と思ったに違いない。それが離れてやっとお互いの気持ちに気付くという、男女関係のような彼らの絆。苦しい時だからこそ、一緒に過ごした日々が楽しい思い出としてよみがえってくる様子はまるで恋愛映画を見ている気分だった。ただその後の、少女が山で遭難するエピソードは取ってつけたようで物足りなかったが。。。

福本次郎

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