きな子 ~見習い警察犬の物語~ - 渡まち子

◆落ちこぼれペアの奮闘は、思わず応援せずにはいられない(50点)

 思いがけずコンビを組んだ一人と一匹が困難を乗り越えて絆を結ぶ姿は、まるでバディ・ムービーのよう。失敗を相手のせいにせず、互いを補うことこそがパートナーと呼べる証だ。18歳の杏子は警察犬訓練士を目指して入所した訓練所で、ラブラドール・リトリーバーの子犬に出会う。身体が弱く警察犬にはなれないと言われたその子犬を、毛色から“きな子”と命名し、周囲の反対を押し切って「自分がきな子を警察犬にします!」と宣言する。その日から1人と一匹の奮闘の日々が始まった。だが、警察犬試験に何度も失敗するきな子と、きな子を訓練できない自分に失望し、杏子はとうとう訓練所を離れる決心をする…。

 香川県丸亀市に実在するズッコケ見習い警察犬「きな子」は、試験に何度失敗してもチャレンジする姿と、警察犬にはない癒しの役割で地元をはじめ全国的に大人気になった犬。訓練士も犬も半人前だが徐々に成長していく姿や、訓練所の所長一家との厳しくも温かい交流、やがて起こる事件と、物語は定番の展開である。杏子ときな子の関係は、何かを達成することよりもそのプロセスにこそ価値を見出すかのようで、落ちこぼれペアの奮闘は、思わず応援せずにはいられない。もっとも、きな子という犬の資質を考えると、警察犬よりセラピー犬が向いているのは素人でも分かる。警察犬にさせようと何度も試験にトライするのは、人間側の都合で、きな子の適性を見誤るものではないのかという根本的な疑問は常につきまとった。ただ、警察犬になることが本当にきな子にとって幸せなのか? と杏子が自問する姿は、そのまま、ヒロインが、訓練士になることへの迷いと不安にフィードバックする問いなのだろう。“あんこときなこ”のコンビは、実は犬のきな子が人間の杏子の成長に付き合っている構図なのだ。欧米は犬を目的をもって徹底的に改造する。一方、日本はできるだけ本質を生かして育てるという。杏子のきな子への接し方はそのどちらにもなりきれず、結局は両方にとって不幸なのではないか。杏子の手本となる先輩訓練士のエピソードも何だか中途半端だ。きな子は愛らしいし、ほのぼのとした顔立ちの夏帆も適役、子役たちは驚くほど達者な演技を見せる。だが、この映画は、人間と動物との係わりについてもう一度考えてみたくなるものになってしまった。

渡まち子

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