世界最強のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマー(「アルマゲドン」「パール・ハーバー」等々)が製作するこのロマコメは、一見スィートな女の子向けでありながら、よく見るといかにも男が作ったような骨太さを感じさせるユニークな一品となった。
レベッカ・ブルームウッド(アイラ・フィッシャー)は、生来のお買い物好きがたたり、いまやカード破産寸前。一念発起して、憧れのファッション雑誌社の面接にチャレンジするが、得意のハッタリ全開の結果、受かったのはなんと経済専門誌。はたして彼女は、自らの正体を隠しきれるのか。
どう考えても最も不適切な人材を採ってしまった経済誌の運命やいかに、といったところ。無責任男ならぬ無責任ギャルの口八丁に乗せられて、お堅い業界人たちが翻弄される様子が楽しい。
カードで買いまくって後でひーひー言うなんて、なんてムカつくバカ女だ! と思いそうなものだが、この主人公はどこか憎めない。ファーストシーンで、彼女自身が小さいころの話をするのだが、そのあたりから一気に観客の共感をかき集めてしまう。これは主演女優アイラ・フィッシャーの持つ天性の感じのよさ、およびP・J・ホーガン監督の手腕によるものだ。
とくに、劇伴音楽をノンストップでつなぎ、必要に応じてボリュームをも調整していくテンポのいい編集が冴えている。パトリシア・フィールド(『SATC』シリーズや『プラダを着た悪魔』を担当した人気デザイナー)が原宿等で買い集めた、かわいい洋服の数々が、こちらをさらに楽しい気分にさせる。なんでもアイラ・フィッシャーは小柄なので、日本サイズがぴったりなんだそうだ。
そして何より私が気に入ったのが、この映画がとてもわかりやすいアメリカ風刺になっている点。ご存知のとおり、アメリカという国は世界中から借金してものを買いまくる事で、経済をまわしている。たとえどんなに赤字になろうが、ドルが世界の決済通貨である限り、紙幣をすりまくればそれで無問題。バブルがはじけてもアメリカの借金を返すのは世界の人々(とくに日本人)、という錬金術が成り立っていた。
それがいよいよ破綻しはじめたのが昨今の状況であり、この映画の主人公だ。そうした苦境を受け、彼女が最後にする選択は、映画的快感度の高いものであるから、ぜひ劇場でご確認を。
笑いまくり、あとでホロリとさせ、ちょっぴり社会派な隠しテーマも内包する。女性はもちろん、男性にも自信を持ってすすめられるオススメ品だ。
(映画ジャッジ)