おじいさんと草原の小学校 - 福本次郎

英語を征服することでマルゲは過酷な己の運命に復讐しようとしたのだろうか。(点数 70点)


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文字を習う、それは失った過去と対峙し、清算し、そして前に向かっ
て歩き始めること。その思いは高齢になっても衰えない。長身の老人
がabcも知らない子供たちと共に教室で学ぶ様子は一見微笑ましい。し
かし、胸の奥に抱える悲劇がフラッシュバックしたとき、彼の心と体
は凍りついてしまう。21世紀になって教育が無償化されたケニア、物
語は、少年時代は人種差別で学校に行けず、成人後は独立運動に身を
投じた男が、もう一度、今度こそ自分の人生を取り戻そうとする姿を
追う。

84歳になるマルゲは小学校で学習しようとするが門前払いされる。そ
れでも校長のジェーンに直談判し、入学を認められる。だが初めて鉛
筆を持った喜びもつかの間、彼の脳裏に忌まわしい光景がよみがえる。

マルゲは50年以上前のケニア独立運動にかかわった闘士で、旧宗主国
の英国官憲に捕えられ、拷問された経験もある。映画は、マルゲの通
学が原因で起こる波紋に彼の記憶を挟みこ込んで、権力に対する彼の
闘争はまだ終わっていない事実を印象付ける。

マルゲをに授業を受けさせるために上層部とかけあうジェーンもまた
孤独な戦いを強いられるが、マルゲに教えられた“勇気”で困難に立
ち向かう。マルゲが教わるのは妻子の命さえ奪った憎き英国人の言葉。
英語を征服することでマルゲは過酷な己の運命に復讐しようとしたの
だろうか。

福本次郎

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