終盤、まとまりを欠いてしまうのが惜しい(50点)
2大オスカー女優が紡ぐ母娘の愛と再生の物語は、宿命を感じさせる暗いドラマだ。高級レストランのマネージャーとして働くシルヴィアは、仕事はできるが行きずりの情事を繰り返し、愛を拒絶するかのような孤独な日々を送っていた。ある時、彼女の前に、マリアという名の12歳の少女が現れる。戸惑うシルヴィアの脳裏に、まだ彼女がマリアーナという名で呼ばれていた若き日の苦い恋と、取り返しのつかない過ちがよぎる。
たとえ年を重ねても妻や母である前に愛される女でありたいと願う母を、10代の娘が理解できないのは無理はない。だがそんな彼女が、母の不倫相手の息子と愛し合うことになるとは。娘は母を憎み、同時に愛していることが、こんな皮肉な相似形で現れるのが悲しい。異なる場所と時間を行き来して描かれるのは、現代の刹那的なシルヴィアの日々とマリアという少女の出現、母の不倫の恋と若き日のシルヴィアの許されない恋だ。シルヴィア自身の重大な秘密が明かされる終盤が衝撃的で、彼女の行為はいくらなんでもひどすぎると思うが、代償としてその重い罪は決して彼女を解放せず、まるで天罰のように愛を信じられない人間になることを強いる。終盤、まとまりを欠いてしまうのが惜しいが、マリアとの和解が、かすかな希望の光に思えた。海辺の街の寂しい風景と、渇ききった灼熱の大地の景色の対比が効いている。
(渡まち子)