“お約束”感が安心で心地よい(60点)
女性上司が男性部下に自分との結婚を“命令”するのは新しい。だが、婚活と永住権の組み合わせは、新機軸というよりむしろ古典。いずれにしても明るいノリはロマ・コメの王道だ。出版者の鬼編集長マーガレットは、NYで成功したカナダ人・40歳のキャリウーマンだが、ビザの申請をサボッたために国外退去を命じられる。そんなことでキャリアを捨てるものかと、とっさに思いついた捨て身の案は、なんと、気弱な部下・28歳のアンドリューとの偽装結婚。バレれば重罪の二人は、入国管理官の質問に備えて、週末をアンドリューの実家のアラスカで過ごすハメに。マーガレットは、素朴な街で思いがけない歓待を受け、とまどうことになる。
サンドラ・ブロックはやっぱりコメディがよく似合う。肉食系女子と草食系男子のパワハラもどきの恋愛は、ロマンチック・コメディの定石通りの展開で、最悪のスタートから互いを知ることでやがて本物の恋へと変わる。この“お約束”感が安心で心地よい。グリーンカードの扱いが安易すぎたり、アンドリューの実家が富豪である必要性に欠けるのは気になるが、その分、アラスカという異世界の描写で笑わせポイントを稼いだ。お気楽なようで物事をしっかり見ている祖母アニーの名演技に、マーガレットもアンドリューも観客までもヤラれてしまうはずだ。この物語は一見アラフォー女子の結婚への妄想のように見えるが、案外、頼れる年上女房に甘えたい逆玉狙いの男子にもウケそうで、微妙な面白みが漂っている。ただロマ・コメにはサンドラ・ブロックは少々年をとりすぎた。今回までがぎりぎりセーフといったところか。
(渡まち子)